教授挨拶
研修医・医師の方へ
獨協医大整形外科では「治せる整形外科」をモットーに手術治療に軸足をおいた診療を行っています。適切な診断に基づいた適切な治療の実施が安定した臨床成績をもたらすことはいうまでもありません。「適切な治療」とは「最高の治療効果をもたらすために必要な治療」ということであり、その時代に実施可能なあらゆる手術治療をオプションとして完遂できる技量が求められます。手術は「徹底的に見て覚える」技術です。
この眼前で「見る」とは、技術を習得するためにきわめて重要なプロセスで、文章や口頭では決して伝わることのない空間的なイメージとして脳裏に焼き付けることです。様々な伝統芸能がこのスタイルで伝承されているのと同様であり、これが「手術がアートと呼ばれる所以」であります。そして手術の現場でなされる会話は手技書では伝わらないtipsの宝庫であるし、必要に応じて行われる指導医のトラブルシューティングを見て覚えることは、質の高い外科治療を提供できる優秀な(腕の良い)外科医に成長するためには必須の課程と考えます。獨協医大整形外科では、このような手術修練に重点をおいた外科医の育成を行っています。手術教育は実施できる人的・物理的環境が整っていない限り、効率的に行うことはできません。当教室では、すべての関連医療機関(常勤、非常勤とも)で十分な手術修練ができるようにしています。また、大学と関連医療機関での勤務を交互に行うことで、一般的手術と高度手術を総合的に習得できるようにしています。詳細なトレーニング・システムは新専門医制度の獨協医大整形外科研修プログラム(リンク)を参照して下さい。また、整形外科専門医を取得した後は専門領域を自主的に選択し、さらに二階建てとなる脊椎脊髄外科専門医、手外科専門医を目指した研修プログラムで研修します。専門領域に進んだ後は、希望に応じて各内外の一流医療機関や大学への留学も可能です。
これまで臨床外科医の教育について書いてきましたが、医師は研究者であることも忘れてはなりません。卒後教育のもう一つの大きな柱は研究者としての「リサーチマインドの涵養」です。獨協医大整形外科では、多くの臨床研究のほか、臨床応用性(clinical relevance)の高い基礎研究を重点的に行っています。基本的には大学院に所属し、必要に応じて基礎医学講座と連携しつつ研究を行います。基本的には社会人大学院性として、前述の外科修練と平行して研究を行ってもらいます。現在の主なテーマは、「三次元動作解析装置を用いた脊柱変形の動的グローバルバランスに関する研究」「コンパクトMRI装置を用いた膝関節半月板の運動学に関する研究」「マイクロMRIを用いたマウス先天性脊柱側弯症に関する研究」などを行っています。これらの研究成果は英文で国際学術雑誌に発表し、医学博士を取得します。また、臨床研究は手術成績向上を目指した病態研究などを中心に、毎年、一流の国際学会で報告しています。
近年、医学部には3〜4割の女子学生が在籍しており、外科系診療科に進む女性医師が増えています。女性医師が出産、子育てしながら卒後トレーニングや医療を実践していくためには、女性医師支援センター、病児保育施設、いわゆる「女医枠」での勤務態勢など、さまざまなインフラ整備が必要です。本学ではこれら女性医師が安心して勤務できる環境が充実しており、整形外科でも実際に女性医師が子育てと診療や手術修練の両立を実践してくれています。
最後に全国の整形外科の先生方へのメッセージです。前段で「アートとしての手術」について書いてきましたが、手術とは中世以前の門外不出の伝統技術のように限られた弟子たちにすべてを伝え、その希少性がさらに価値を高めるといったものとは根本的に異なり、社会福祉のためにすべての人がその恩恵を享受できるよう伝承される技術であります。後輩外科医に直接指導できる数はごく限られているため、ムービーを多用した指導、カダバーセミナーの実施など、より情報量の多い外科医教育を行っていく必要があります。当教室では、学外向けのカダバーセミナーや手術見学コースを数多く実施しております。興味を持たれた先生は、ホームページ上のお知らせで、学外向け研修コースなどを逐次、ご紹介しておりますのでご参照いていただければ幸甚です。
このホームページをご覧いただいた全国の整形外科医を目指す全国の若手医師・研修医・医学生の皆さん、獨協医科大学整形外科は皆様をお待ちしております。